5歳の息子が映画を作っているのを見て、改めてEmpowermentについて考えた
(すいませんこれはイメージ写真です。)
冬休みに子供がこんな動画を作りました。
自分は出演しただけで、監督として撮ったのは5歳の息子。
まだ平仮名も読めないのに(それはそれで問題なんですが・・・)、この映像の撮影、編集、音楽監修までを一人でやってしまいました。
もしかして、若きスピルバーグの誕生?
いえ、Hondaが出しているこのアプリを使っただけです。
30回クリックするだけで映画が作れる
このアプリを使うと、iPhoneでワンクリックを30回位繰り返すだけで、24秒の映像作品が、撮影・編集から音楽編集まで出来てしまうのです。
簡単にアプリの仕組みを説明すると:
セットアップ
撮影前に【1秒 x 24回】【2秒 x 12回】【3秒 x 8回】の3択から設定を選ぶ。
撮影
予め1秒 x 24回で録画する設定になっていて、ワンクリックで1秒間の録画撮影。
カメラを動かしながらクリックを24回繰り返すだけで、撮影は自動的に終了。
編集
設定上24回撮影した素材で制作されるので編集の作業は基本不要。
後はエフェクトのフィルタを選べばそれらしい映像のルックスに仕上がる。
音楽
ワンクリックで選択(音楽を視聴できる)。もうワンクリックで確定。
選択出来る15のミュージックは、全てビートの早さが1秒単位のもの。どれを選んでも自動的に音楽が1秒の映像カットとシンクロされる仕組みになっている。
音源はどれもアートっぽい雰囲気になるようなクールなテイストのものが揃っている。
仕上げと配信:
ワンクリックで終了と共にレンダリング開始。
youtubeアカウントを持っていればもうワンクリックで配信もできる。
・・・とまあこんな感じです。
クリックして行くだけで流れるように操作できて、操作にかかる時間は、編集を入れても全部で1分もあれば気軽に映像作品が作れてしまうわけです。
アプリが映画制作のハードルを下げる
RoadMovieはユーザーインターフェイスが秀逸で、操作説明もしていないのに、うちの息子は触り初めて勝手に画面を押し続けただけで上記の作品が作れました。
しかもその体験で相当映画作りが気に入ってしまい、その日はずっと「映画もっと作りたいもっと作りたい」と呪文のように繰り返す始末・・・。
で、こんなことを目の当たりにして、自分は考えた訳です。
iPhone一つで1分足らずで映画がつくれるという体験が5歳児に自分の事を「映像作家である」と錯覚させたというのは、ある意味すごいなと。
勿論ストーリー性や感性が込められて作られた訳ではなく、単純にクリックし続けて完成したものです。どれほどのもんだよというツッコミもあるとは思います。
でも事実として初めて映画を作った子供に瞬時にして創作意欲を掻き立てることに成功している訳ですよ。
これは凄いですよ。
例えばこのアプリをいじってる他の子供達も、世界中でどんどん映像を作っていて、そのうちの何人かが、小学生位で、実際に配給される映画の監督デビューしちゃうかな・・・みたいな想像だって膨らみます。
映画監督になるということ
すいません、何故こんな話で熱くなっているかって、実は自分は、何を隠そう若い頃に映画監督を志した事があるのです。
1998年機械工学の専攻で大学を卒業した後、アメリカのユニバーサルスタジオという会社にテーマパークの乗り物のメカ・エンジニアとして就職しました。
元々映画好きだったのですが、就職した会社の本社がハリウッドのど真ん中にあって、社内のカフェテリアに普通にスピルバーグが打ち合わせしていたりして、当時空前のインディーズ映画ブームだったりしたので、そこら辺にいた他の20代の若者が皆そうであったように自分も普通に「自主映画を作って売り込めばスコセッシみたいに映画監督になれるんじゃないか」なんて淡い夢を抱きました。(今シリコンバレーや東京で大学生から中年までみんなスタートアップしているブームのような感じだったですかね)
ネットで調べてみたら、近くのコミュニティカレッジに映画学科なるものがあることが分かり(そこら辺はさすがハリウッドですね)、ちゃんと夜間に受講できるクラスがあり、受講料も1単位15ドルと安い!(ここら辺はさすがアメリカ)。
即受講して映画も幾つか作ってみました。
で、半年続けてみて、結局その夢はあっさり諦めました。
理由は、単純にフィルム代が高過ぎたということ。
当時まだデジカメは画素の粗さで上映映画には出来ないと言われていて、フィルムで撮ると一番安価な8ミリフィルムで数分の作品を作ったとしてもネガの購入と現像だけで何百ドルもかかってしまう、つまり映画を自分で作ると自己破産するんだなということが分かり、やる気を無くしました(勿論才能が無いっていう想いもあったけど)。
で、あれから15年・・・とうとう"誰でも映画が撮れる時代"になったので感動している次第です。
これまでも技術進歩のトレンドは追っていて、
デジタルの動画技術の進歩でデジカメでも配給可能な映画が撮れるようになり、
Youtubeを使えば無料で配信も出来るようになったりと、
様々な形で映画監督デビューのハードルが年々下がって来ているのは知っていたのですが、アプリによっていよいよ年齢のハードルも下がったのかと!
「誰でも◎◎できる」世界のこれから
映画にしろ何にしろ、自分はこの「誰でも◎◎できる」というコンセプトが結構好きなんですね。
英語ではよく"Empowerment"という言葉で呼ばれますね。
個人が何かをやり遂げる際のハードルを下げると、
それが自己実現の意欲をかき立てます。
そしてそれが創作物の多様化を呼び、今までに無いものが生まれます。
国連だってこんな記事を出版していたりします:
Empowermentは本当に社会を変えると思います。
自分はそれにすごい魅力を感じていて、今はストリートアカデミーというサービスで「誰でも先生になれる」世界を実現しようとしています。
自分以外でも、現時点で:
- 誰でもネットでモノを売れる(stores.jp、base)
- 誰でも企業からシゴトを受けられる(クラウドワークス、ランサーズ)
- 誰でも資金が集められる(キャンプファイア、readyfor)
- 誰でも仲間が集められる(wantedly、ジョブシェア)
- 誰でも物語を出版できる(Kindle、Storys.jp)
- 誰でもネットでモノが作れる(shapeways)
なんていうことをものすごいスピードで実現していたりする人も沢山います。
これらがやっていることを総合すると、
今、個人の出来る事の幅が、あり得ないくらい広がっている。
と言えます。
"Empowerment"がもたらす社会の未来は、今後どうなって行くのでしょうか。
自分は、Empowermentは、社会を良くして、最終的に人類全体の能力を高めることにもつながるんじゃないかとさえ思っています。
個人が誰でも自分がやりたい事ができてなりたい自分に自由になれる時代が来れば、
好きな事に従事している人の率が増えます。
同じことを、好きな人がやるのと嫌いな人がやるのとでは、当然ながら好きな人がやる方が生産性が上がります。
だから最終的に社会全体の生産性があがり、人類全体で出来ることの能力が上がると思います。
自分の言っている事は、飛躍でしょうか?
そうかもしれません。
でも世界が変わっていることは確かです。
そして自分もまたこのEmpowermentの拡大に携わらせて貰っているということに、毎日ワクワクしています(勿論まだまだ道のりは長いですが)。
そして、今後更に他のどんなチャレンジャーが現れて、
どんな「誰でも◎◎が出来る」世界を作って行くのか、
技術とデザインが世界をどう変えて行くのか、
それもまたとても楽しみです。